追放聖女はスパダリ執事に、とことん甘やかされてます!
「私も同じです。ヘレナ様が私を想ってくださることが嬉しい。あなたにとって掛け替えのない人になりたい――――そんな私の願いを叶えて下さったのですから、ヘレナ様が負い目を感じる必要は全くないんです」


 レイの言葉に、ヘレナの胸が甘く疼く。


(そっか……わたし、素直になっても良いんだ)


 ずっとずっと、自分の想いに蓋をしていた。許されないと諦めていた。


(それでも対等とは言い難いのかもしれないけど)


 レイとの間に壁を作っていたのは、他ならぬヘレナ自身なのかもしれない。そう気付いて、ストンと身体が軽くなった心地がする。


「レイ……もう一つだけ、質問をさせて? 
レイはわたしが『お嬢様』だから、わたしのもので居てくれるの? 甘やかして、大事にしてくれるの? レイの中でわたしが『お嬢様』じゃ無くなったら、側に居てくれなくなる? ずっと頑なにわたしのことを『お嬢様』って呼んでいた理由は……」

「……一つだけと仰いつつ、沢山質問がありますね」

「だって――――――」


 ヘレナの言葉はそれ以上続かなかった。優しく唇を塞がれて、ヘレナの胸が甘く蕩ける。
 レイはヘレナの頭を撫でながら、ゆっくりと唇を離した。かと思えば、もう一度短く、触れるだけのキスをする。ヘレナはムッと唇を尖らせた。


「不意打ちなんて……」

「言ったでしょう? 私はズルい男なんです」


 クスクスと笑い声を上げながら、レイはヘレナの手を握る。それからいつかのように、跪き、真っ直ぐにヘレナを見上げながら、彼は穏やかに目を細めた。


「ヘレナ様は私の大事なお嬢様です。これから先何があろうと、それは絶対に変わりません。
けれどそれ以前に、ヘレナ様――――あなたは私にとって、世界で一番大切な女性です。どろどろに甘やかして、可愛がって、大切にしたい唯一の人です。
あなたが何と仰ろうと、レイはずっと側に居ます。私がヘレナ様を幸せにしますから」


 そう言ってレイは幸せそうに笑う。ヘレナは瞳を震わせつつ、コクリと小さく頷いた。


「あっ……でも『お嬢様』って頑なに名前を呼んでくれなかった理由は?」

「それは当然、箍が外れないようにするためですよ」


 レイはサラリとそう口にしつつ、ヘレナのことを抱き締める。彼の言う通り、二人を隔てていた何かが、綺麗さっぱり取り払われたかのようだった。ヘレナはドキドキと胸を高鳴らせつつ、レイのことをそっと見上げる。レイは盛大なため息を吐きつつ、ヘレナの肩に顔を埋めた。


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