追放聖女はスパダリ執事に、とことん甘やかされてます!
(まさかレイの昔話が聞ける日が来るなんて、思わなかったわ)
なるべく表情には出さないようにしていたものの、ヘレナはひどく浮かれていた。ヘレナはこの十年間、執事になる前のレイの生活について何度も尋ねた。けれど、いつも巧妙にはぐらかされ、フワフワしたことしか教えてもらえなかった。
彼が何処で生まれ、どんな幼少期を過ごしたのか。家族は何人いるのか、どうして帰る場所が無くなってしまったのか――――知りたくても叶わなかったレイの過去が、今明らかになろうとしているのだ。浮かれるなという方が無理があった。
「では、改めて自己紹介から。僕はニック。レイモンド様の近衛騎士をしていました。
十年前にレイモンド様が行方不明になってからは、お兄様であるイーサン様の指揮下で、あれこれ仕事をしています」
「そう……! レイにはお兄様がいらっしゃるのね」
「……まぁ、腹違いではありますけどね」
レイはそう口にして小さなため息を吐く。ヘレナが首を傾げていると、ニックがずいと身を乗り出した。
「イーサン様のご生母は正妃様、レイモンド様のご生母は側室でいらっしゃるんです」
「……? 正妃、様?」
ヘレナは今しがた聞いた情報を頭の中を整理しつつ、いよいよ首を大きく傾げる。
(近衛騎士がいて、腹違いのお兄様の母親はお妃様で、レイのお母様は側室で……)
「はい! お嬢様はご存じないようなのでお伝えしますと、レイモンド様はなんと! 我が国が誇る第二王子でいらっしゃるのです!」
なるべく表情には出さないようにしていたものの、ヘレナはひどく浮かれていた。ヘレナはこの十年間、執事になる前のレイの生活について何度も尋ねた。けれど、いつも巧妙にはぐらかされ、フワフワしたことしか教えてもらえなかった。
彼が何処で生まれ、どんな幼少期を過ごしたのか。家族は何人いるのか、どうして帰る場所が無くなってしまったのか――――知りたくても叶わなかったレイの過去が、今明らかになろうとしているのだ。浮かれるなという方が無理があった。
「では、改めて自己紹介から。僕はニック。レイモンド様の近衛騎士をしていました。
十年前にレイモンド様が行方不明になってからは、お兄様であるイーサン様の指揮下で、あれこれ仕事をしています」
「そう……! レイにはお兄様がいらっしゃるのね」
「……まぁ、腹違いではありますけどね」
レイはそう口にして小さなため息を吐く。ヘレナが首を傾げていると、ニックがずいと身を乗り出した。
「イーサン様のご生母は正妃様、レイモンド様のご生母は側室でいらっしゃるんです」
「……? 正妃、様?」
ヘレナは今しがた聞いた情報を頭の中を整理しつつ、いよいよ首を大きく傾げる。
(近衛騎士がいて、腹違いのお兄様の母親はお妃様で、レイのお母様は側室で……)
「はい! お嬢様はご存じないようなのでお伝えしますと、レイモンド様はなんと! 我が国が誇る第二王子でいらっしゃるのです!」