追放聖女はスパダリ執事に、とことん甘やかされてます!
「聖女様!」
私は大声でヘレナ様を呼んだ。少しの沈黙。ややして先程よりもハッキリと、ヘレナ様の声が聞こえて来た。私は急いで声の聴こえた方へと向かう。段々とヘレナ様の声が大きく聞こえるようになってきた。
「レイ!」
そうして辿り着いた場所にあったのは、使われなくなった井戸だった。
後になって分かったことだが、この井戸はヘレナ様が泉を浄化するようになるまで、雨水を溜めていた場所らしい。けれど、泉の水の方が安全で綺麗ということ、管理の難しさから使われなくなり、枯れたまま放置されていた。その蓋が何かの拍子に空いてしまったのだろう。
中を覗き込むと、暗がりの中にヘレナ様がしゃがみ込んでいるのが見えた。
「聖女様っ! ご無事ですか?」
私の問い掛けにヘレナ様は「うん」とすぐに答えた。けれど、言葉とは裏腹に微かに声が震えているのが分かる。私は急いで井戸の中へ滑り降りた。中は思いのほか深く、子どもの足で上ることは到底不可能だろう。私が降り立つと同時に、ヘレナ様は急いで立ち上がり――――それから何かを躊躇う様にしてその場に踏みとどまった。
「ごめん……ごめんなさい、レイ。自分でここに降りたのに、上れなくなってしまって……皆に迷惑を掛けてしまったわよね。本当にごめんなさい」
ヘレナ様はクシャクシャな顔をしてそう言うと、勢いよく頭を下げる。私は彼女の頭を上げさせて、ゆっくりと首を横に振った。
「迷惑だなんて全く思っておりません。けれど、とても心配しました。見つけられて本当に良かった」
私の言葉に、ヘレナ様はほんのりと瞳を潤ませる。余程不安だったのだろう。ヘレナ様はそのまま私の胸にギュッと抱き付いた。
私は大声でヘレナ様を呼んだ。少しの沈黙。ややして先程よりもハッキリと、ヘレナ様の声が聞こえて来た。私は急いで声の聴こえた方へと向かう。段々とヘレナ様の声が大きく聞こえるようになってきた。
「レイ!」
そうして辿り着いた場所にあったのは、使われなくなった井戸だった。
後になって分かったことだが、この井戸はヘレナ様が泉を浄化するようになるまで、雨水を溜めていた場所らしい。けれど、泉の水の方が安全で綺麗ということ、管理の難しさから使われなくなり、枯れたまま放置されていた。その蓋が何かの拍子に空いてしまったのだろう。
中を覗き込むと、暗がりの中にヘレナ様がしゃがみ込んでいるのが見えた。
「聖女様っ! ご無事ですか?」
私の問い掛けにヘレナ様は「うん」とすぐに答えた。けれど、言葉とは裏腹に微かに声が震えているのが分かる。私は急いで井戸の中へ滑り降りた。中は思いのほか深く、子どもの足で上ることは到底不可能だろう。私が降り立つと同時に、ヘレナ様は急いで立ち上がり――――それから何かを躊躇う様にしてその場に踏みとどまった。
「ごめん……ごめんなさい、レイ。自分でここに降りたのに、上れなくなってしまって……皆に迷惑を掛けてしまったわよね。本当にごめんなさい」
ヘレナ様はクシャクシャな顔をしてそう言うと、勢いよく頭を下げる。私は彼女の頭を上げさせて、ゆっくりと首を横に振った。
「迷惑だなんて全く思っておりません。けれど、とても心配しました。見つけられて本当に良かった」
私の言葉に、ヘレナ様はほんのりと瞳を潤ませる。余程不安だったのだろう。ヘレナ様はそのまま私の胸にギュッと抱き付いた。