追放聖女はスパダリ執事に、とことん甘やかされてます!
ヘレナ様にとって、私はどんな存在なのだろう。
他に婚約者がいるのだし、ただの執事としてしか見られていないと分かっている。けれど、彼女の『特別』という言葉が私のそれと同じであればと願わずにはいられなかったのだ。
(情けない。こんなに感情をむき出しにして……愚かすぎるだろう)
ヘレナ様は小首を傾げつつ瞳を何度か瞬かせる。私はというと、忘れてほしいと言いつつ、話を逸らすことすらできない。どのぐらい時間が経っただろうか。ヘレナ様が徐に口を開いた。
「わたしにとってレイは、世界で一番大切な人だよ」
その瞬間、私は大きく目を見開いた。心臓が大きくドクンと跳ねる。ヘレナ様は頬を赤らめるでもなく、淡々とした様子でどこか一点を見つめていた。まるでご自身の感情と初めて向き合われているかのような、そんな面持ちだった。
「あのね……殿下との結婚は幼い頃に決まっていたことだし、聖女に生まれたからには必要なことなんだろうなぁって思ってる。だけど、結婚のせいでレイと会えなくなるのは嫌だなぁって。寂しいなぁって思うの。レイが『お待ちしておりました』ってわたしを迎えてくれるの、すごくすごく嬉しいから。レイのお陰でわたしは頑張れるし、笑っていられる。幸せで居られるの」
そう言ってヘレナ様は微笑んだ。目頭がグッと熱くなる。涙が零れ落ちそうだった。
(十分だ――――本当に、十分すぎる)
公には特別な存在になれずとも、ヘレナ様の中には私が居る。私のこの手でヘレナ様を幸せにできるのだと思うと、胸が熱かった。
「私は一生、お嬢様のお側に居ます。これから先何があろうと、地の果てまでも追いかけて、『お待ちしておりました』と、お嬢様を一番にお迎えしましょう」
そう言って私はゆっくりと頭を垂れる。ヘレナ様は小さく目を見開き、それから「うん!」と満面の笑みを浮かべた。月が仄かに私たちを照らす。
(私が必ず、あなたを幸せにします)
そう誓いつつ、私は静かに微笑むのだった。
他に婚約者がいるのだし、ただの執事としてしか見られていないと分かっている。けれど、彼女の『特別』という言葉が私のそれと同じであればと願わずにはいられなかったのだ。
(情けない。こんなに感情をむき出しにして……愚かすぎるだろう)
ヘレナ様は小首を傾げつつ瞳を何度か瞬かせる。私はというと、忘れてほしいと言いつつ、話を逸らすことすらできない。どのぐらい時間が経っただろうか。ヘレナ様が徐に口を開いた。
「わたしにとってレイは、世界で一番大切な人だよ」
その瞬間、私は大きく目を見開いた。心臓が大きくドクンと跳ねる。ヘレナ様は頬を赤らめるでもなく、淡々とした様子でどこか一点を見つめていた。まるでご自身の感情と初めて向き合われているかのような、そんな面持ちだった。
「あのね……殿下との結婚は幼い頃に決まっていたことだし、聖女に生まれたからには必要なことなんだろうなぁって思ってる。だけど、結婚のせいでレイと会えなくなるのは嫌だなぁって。寂しいなぁって思うの。レイが『お待ちしておりました』ってわたしを迎えてくれるの、すごくすごく嬉しいから。レイのお陰でわたしは頑張れるし、笑っていられる。幸せで居られるの」
そう言ってヘレナ様は微笑んだ。目頭がグッと熱くなる。涙が零れ落ちそうだった。
(十分だ――――本当に、十分すぎる)
公には特別な存在になれずとも、ヘレナ様の中には私が居る。私のこの手でヘレナ様を幸せにできるのだと思うと、胸が熱かった。
「私は一生、お嬢様のお側に居ます。これから先何があろうと、地の果てまでも追いかけて、『お待ちしておりました』と、お嬢様を一番にお迎えしましょう」
そう言って私はゆっくりと頭を垂れる。ヘレナ様は小さく目を見開き、それから「うん!」と満面の笑みを浮かべた。月が仄かに私たちを照らす。
(私が必ず、あなたを幸せにします)
そう誓いつつ、私は静かに微笑むのだった。