あの日の素直を追いかけて
第6話 再びつながった時間
あれから半月ほどが経過した日曜日の夕方、メーラーの新着アイコンが点滅した。
SNSからの自動メッセージだと分かっていても、普段はあまり気にかけることはないのだけれど、この日は飛びつくようにパソコンを開いてメッセージを確認した。
「来た……」
アイコンを開いてみると、画面上の見慣れたフォントではあるものの、文面は昔と変わらない雰囲気だった。
『波江君
お久しぶり……だね。 メッセージありがとう。
私も、久しぶりの名前を見て、中学生の頃に戻ったようにドキドキしちゃいました。
もうあれからずいぶん時間が経つのに、私のことを覚えていてくれてありがとう。
実は私はまだ一人アメリカにいます。でも、もう少ししたらパスポートの切り替えで一時帰国します。
その時には久しぶりに会えるかな。
本当に声をかけてくれてありがとう。それでは会える約束をしてもいいかな?
由実』
やっぱり、由実本人だった。
「約束をしていいか?」だなんて、そもそもがダメもとだったのだから、再び本人と連絡がつくようになるなんて、願ったり叶ったりだ。
その後は、SNS上のメッセージ機能からお互いの直接のメールアドレスを交換し、以前のような情報交換に切り替わった。
これなら文字数に制限されることもなく、互いに昔話を続けることができる。
結局、高校だけでなく大学まで現地で進学した彼女は、両親が帰国したあともそのまま現地で日系企業で就職し今日に至っていること。
お互いにまだ独身であることなどのプライベートも交換した。
ただ、将来的には日本に戻りたいという希望はあるようだ。なかなかその時期を決めかねているということも聞いて、その話はゆっくり決めようと。
10年以上の時間は経ってしまっていたけれど、少しずつ由実との言葉遣いも昔に戻ってきた。
完全な帰国の話は一時帰国したとき必ず相談に乗ると伝えて、お互いにその日を待ちわびるようになった。
最初のメールから約半月後、由実からのメールが入った。
『こんどのイースターでお休みをもらってパスポートと滞在ビザの更新の関係で一時帰国するの。その時に会えるかな?』
もちろんだ。日程を聞き出して、その予定を自分のスケジュールに当て込んだ。
基本的には実家に身を寄せるとのことだけれど、少し旅行もしたいということ。
俺もそのスケジュールにあわせて仕事の予定の調整と休暇も申請した。
そのときに、空港で出迎えることを提案してみる。
『これまで何度か帰国したけど、こんなに楽しみなのは初めてかな。その時はお世話になっちゃうけどよろしくね』
最後に飛行機の便名を聞いて、俺たちは久方ぶりの再会を約束した。