課長に恋してます!
 今日は天気も良く、外に出るとよく晴れていた。
 東京駅から歩いて15分。
 皇居東御苑についた。

 大手町に会社があるから、この辺りはそれなりによく知っていたけど、周りを通るだけで、東御苑の中に入った事はなかった。

 東御苑の周りは池で囲まれ、その先には立派な石垣があってお城のような建物も建っていた。
 流星が「お城だー」って嬉しそうな声をあげた。

「あれはね、(やぐら)だよ。鉄砲とか、弓とかが備えられていた所なんだ」

 課長がしゃがんで、流星と同じ視線になって説明してくれる。

「石垣の周りはぐるっと池があるよね。堀って言うんだよ。簡単に中に入れないように作ってあるんだ」
「知ってる! お城の中に悪い奴が入れないようにしてあるんでしょ!」
「りゅうちゃん、よく知ってるね」
「パパが教えてくれたの。パパね、れきしの先生なんだよ」
「すごいなー。じゃあ、専門家だね」
「うん。流星ね、徳川のしょうぐん全部わかるよ」
「おじさんも知ってるよ。じゃあ、言い合いっこしようか」

 課長と流星は交互に徳川十五代の将軍の名前を言いながら、歩き始めた。
 流星はとっても楽しそうだ。

 課長はびっくりするぐらい子どもの扱いになれている。
 課長に会ってからの流星は私と二人だけでいた時よりも機嫌がいい。

 流星をいきなり預かる事になって間が持つのか心配だったけど、課長がいてくれて助かった。
 課長と流星が並んで歩く姿は、親子みたいで微笑ましい。

 それに優しい表情を浮かべている課長が素敵。
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