課長に恋してます!
 大手門から東御苑に入ると、外国人観光客の姿が多くあった。
 歩いているだけで、中国語や韓国語、英語、イタリア語、フランス語などが聞こえてくる。

 そしてなぜか、課長はよく外国人に呼び止められる。
 その度に課長は中国語や英語で説明していた。
 イタリア語、フランス語で話しかけられた時はちょっと困ってた。それでも、相手の言葉の意味をわかろうとするのは課長らしい。

 課長はわからない事をわからないままで終わらせる人じゃない。わからないなら、わかろうとする姿勢が大事だと、仕事をしながら教えてもらった。そのおかげで、大きな仕事を任されるようにもなった。

 課長に任された仕事で一番大きかったのはプロジェクトリーダーとして香港ブランドの旗艦店のオープン準備を任された事だった。それまで石上の補佐という形で仕事をして来た私がリーダーとなって一つのプロジェクトを進めるのは大変だったけど、大変な分、やりがいも大きかった。課長のおかげで貴重な経験を積む事が出来て、その後の仕事にも役立っている。課長は上司としても尊敬できる人だ。そして私の心をドキドキさせる素敵な人。

 流星に優しい笑顔を向けている課長を見てますます胸がドキドキしてくる。
 課長と手をつないで坂道を進んでいく流星がうらやましい。

 私も課長と手をつなぎたい。

「一瀬君」

 課長が立ち止まって振り向いた。
 目が合ってドキッとする。

「はい」
「大丈夫? ヒールだから歩きにくいんじゃない?」
「大丈夫です」

 今日は女子力を狙って、ヒールのある靴を履いてきた。
 でも、スニーカーの方が良かったなと、広い敷地内を歩きながら後悔していた。

 だけど、課長は私の足元見ててくれたんだ。
 気づいてくれて嬉しい。
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