課長に恋してます!
 東京駅には夕方5時頃戻って来た。
 流星を千葉まで送り届ける為だ。

 せっかく課長と一ヶ月ぶりに会ったのにあまり話せなかった。
 このまま課長とは駅でお別れになるのかな……。
 
 課長は流星と手をつなぎながら、また徳川将軍の話をしていた。
 なんとか、話に割り込もうとしたけど、流星に鋭い突っ込みをされて、何も言えなくなる始末だ。

 情けない。5才児の歴史知識に負けるなんて。
 こんな事なら、もっと日本史勉強しておけば良かった。

「一瀬君、何線?」

 流星と前を歩いていた課長が立ち止まる。

「えーと、総武快速線です」
「じゃあ、こっちだ」

 課長が総武快速に続く長い下りエスカレータがある方角を指した。

「僕はこっち」

 新幹線の方を課長が指した。
 その瞬間、悲しくなる。もうお別れなんて酷い。あんまりだ。

「おじさん、来ないの?」

 流星が引き留めるように言った。

「りゅうちゃん、ここでさよならだ。今日は楽しかったよ、ありがとう」

 課長が流星の頭を撫でた。

「おじさん、一緒に行こうよ」

 流星が課長の手を引っ張る。

「りゅうちゃん、ダメよ。沢山遊んでもらったでしょ」
 と言いつつ、内心ではもっと流星に頑張ってもらいたい。

「ごめんね。おじさんも、もう帰る時間だから。また遊ぼう。美月お姉ちゃんの事を頼むな。電車で悪い人に会わないようにりゅうちゃんがしっかり守ってよ」
「うん。みづきの事守るよ。オレ、男だもん。よし、みづき行くぞ」

 やる気なった流星が言った。
 課長は子供を乗せるのがうま過ぎる。

 流星にもう少し頑張ってもらいたかった。
 ちょっとだけ流星のワガママに負けて、一緒に千葉に来てくれる課長を期待していた。
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