課長に恋してます!
「それじゃあ、一瀬君、今日はありがとう」

 課長が笑顔を浮かべる。

 聞きたくない言葉だった。
 やっぱり課長は帰ってしまうんだ。

「こらちこそ、ありがとうございました」
「じゃあ」

 課長は新幹線の方へと歩いて行った。

 遠くなって行く紺色のコート姿の背中を見ながら目の奥が熱くなる。

 次はいつ会えるんだろう。香港は遠いな……。

「みづき、行こう」

 悲しんでる暇もなく、私の手を引っ張って流星が歩き出す。

 流星に気づかれないように涙を拭いた。

 それから、総武快速へ向かって歩く。長いエスカレーターを下って、ホームに立ち、タイミングよく到着した成田空港行の快速電車に乗った。

 混雑する車内に乗り込んだ時、スマホが振動した気がする。
 電車が走り出してから、スマホを見た。

 メールが届いていた。

 「 一瀬君。

 夕食を一緒にどうですか?
 東京駅に戻ってきたら連絡下さい。
 近くのホテルにチェックインしてます。
 香港に戻るのは明日の夜です。

                上村 」

 課長からのメールだった。
 まさかのお誘いに顔がにやけた。
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