課長に恋してます!
 一瀬君とは有楽町の駅で19時半に落ちあった。
 キラキラとした笑顔を向けられ、会った瞬間、心が躍った。

 銀座方面に歩きながら、一瀬君はりゅうちゃんが物凄く喜んでいたという話をしてくれた。
 表情豊かに話をする一瀬君が眩しい。彼女はこんなに綺麗だったんだと、会う度に思う。

 一瀬君といると年甲斐もなく心がウキウキしてくる。
 ただ一緒に歩いているだけなのに全てが満たされる。

 こんな気持ちになったのは何十年ぶりだろう。

 そっと一瀬君の横顔を覗き見てると目が合った。

「なんです?」

 一瀬君が不思議そうに眉を上げる。

「いや、疲れてない?今日は沢山歩いたからね」
「大丈夫です。だって課長に会えたから」

 くしゃっと笑った笑顔は、本当に嬉しそうで、こっちまで幸せな気分になる。

 これはやっぱり、お医者様でも草津の湯でも治せないというアレなんだろうか。
 意識した瞬間、さらに胸が締め付けられた。

「課長?」

 また一瀬君と目が合った。

「あ、いや。ここ」

 慌てて目を逸らし、予約してた天ぷら屋の前で立ち止まった。

「ここが予約してた店なんだ」

 【天ぷら 花岡】という看板を一瀬君が見上げる。
 少し首を上に向けた横顔もやっぱり綺麗だった。
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