課長に恋してます!
「今夜は、僕を尋問する為に誘ったんですか?」
一瀬君の問いかけをはぐらかすように、話題を変えた。
「そうですよ。だって課長、あんまり自分の事話さないから。部下が上司の事、知りたがるの当然でしょ?」
「仕事熱心な部下を持ててうれしいですね」
「なんか今、めんどくさい部下だと思いました?」
「そんな事ないですよ。僕なんかに興味を持ってもらえて光栄です」
「全然気持ちがこもってない言い方」
「僕の事より、彼氏とはどうなりました?プロポーズされたんですよね?やっぱり寿退社するんですか?」
一瀬君の表情が少しだけ曇る。
「今夜はその話、したくありません」
「ケンカでもしましたか?」
「だから、話したくありません」
一瀬君が怒ったように声を荒げた。
さっきまでの楽し気な様子が消え、つまらなそうに追加したお銚子二本を一気に空にした。
一瀬君はあまり酒は強くない。課の飲み会で潰れた時は、僕がマンションまで送った。
こんなに飲んで大丈夫だろうか。心配になってきた。
「一瀬君、飲みすぎです」
「潰れたら、課長が連れ帰って下さい」
「世話を焼かすね」
「ダメですか?」
「ダメじゃないけど、気をつけなさい。酔った女の子を送り届ける男はね、下心がある奴だっているんだから」
「だから課長に頼むんです。課長は下心ないから」
「信頼してくれてありがとう。でもね、僕だって」
“男なんだよ”と言おうとして、目が合う。
胸がギュッとした。