課長に恋してます!
「私が一方的に好きなだけで、上村課長は部下に手を出すような人ではありません。一昨日会ったのも、たまたまというか」
私のせいで会社での課長の立場が悪くなったら困る。
専務が目を細めて豪快に笑った。
低い笑い声に威圧される。
「一瀬君、俺は責めている訳じゃないから」 と言って、専務が鋭い視線を向けてくる。
背中にも脇にも緊張の汗が。
専務の目的は一体何?
「俺は上村とは同期でね。その縁で上村とは今も親しくしている」
「上村課長から海外事業部にいた頃、香川専務と一緒に香港行きの辞令が出たというお話を聞いた事があります」
「その辞令を蹴ったのも聞いてる?」
「はい。奥様の為にそうしたって」
「あの時香港に行ってれば、俺じゃなくて、あいつが専務になってたかもしれない。それぐらいサラリーマンとして大事な局面だったのに、あいつは大事な人の側にいたいって言ったんだ」
専務が昔を思い出すようにため息をついた。
上村課長が専務に……。
そうだったんだ。そんなに大事な辞令だったんだ。
奥さんへの強い想いを感じて胸が締め付けられる。
一昨日会った上村課長の左手にはやっぱり結婚指輪がはめられていた。
もう亡くなって20年以上経っているのに……。
私のせいで会社での課長の立場が悪くなったら困る。
専務が目を細めて豪快に笑った。
低い笑い声に威圧される。
「一瀬君、俺は責めている訳じゃないから」 と言って、専務が鋭い視線を向けてくる。
背中にも脇にも緊張の汗が。
専務の目的は一体何?
「俺は上村とは同期でね。その縁で上村とは今も親しくしている」
「上村課長から海外事業部にいた頃、香川専務と一緒に香港行きの辞令が出たというお話を聞いた事があります」
「その辞令を蹴ったのも聞いてる?」
「はい。奥様の為にそうしたって」
「あの時香港に行ってれば、俺じゃなくて、あいつが専務になってたかもしれない。それぐらいサラリーマンとして大事な局面だったのに、あいつは大事な人の側にいたいって言ったんだ」
専務が昔を思い出すようにため息をついた。
上村課長が専務に……。
そうだったんだ。そんなに大事な辞令だったんだ。
奥さんへの強い想いを感じて胸が締め付けられる。
一昨日会った上村課長の左手にはやっぱり結婚指輪がはめられていた。
もう亡くなって20年以上経っているのに……。