課長に恋してます!
「赤ちゃんは大丈夫か?」
「うん。何とか持ってくれた。まだどうなるかわかんないけど。しばらく入院になりそう」
「そうか」

 明日からの仕事の予定を思い浮かべる。
 今週は比較的、ゆとりのあるスケジュールだった。

「お父さんは香港に戻って大丈夫だからね」

 葵らしい。
 いつも僕に負担をかけないようにそう言ってくれる。

「おばあちゃんも京子おばさんもいるし、直樹のお母さんだっているから」
「今週は忙しくないから、まだ日本にいられるよ」
「そんな事言ったら大変だよ。京子おばさんがお父さんにお見合いの話があるってまた言っていたから」

 苦笑いが浮かぶ。
 今回は何も言われないで済んだと思ったが、やっぱり見合い話を用意していたのか。

「京子さんは相変わらずお節介だな。長野に帰ってくる度にそんな話を持ってくる」
「心配してるんだよ。私も真一も結婚したらお父さん一人じゃない」
「生意気な事言うようになったな。余計な事考えてないで寝なさい」
「もったいないよ。せっかくお父さんが来てくれたのに。あ、でも、香港に戻って大丈夫だからね」
「まだ日本にいるよ」
「大丈夫なの?」
「ああ」
 葵が嬉しそうに微笑んだ。
 口では大丈夫だと言っているが、側にいて欲しいと思ってくれているようだ。

「ところでお父さん、昨日はどこに行ってたの?」
 思い出したように葵が質問した。

 昨日は……一瀬君と会っていた。
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