課長に恋してます!
 25才の時にゆり子と結婚した。葵は三才だった。年上の女房で連れ子までいて、両親にも、兄にも大反対された。
 祝福された結婚ではなかったが、ゆり子と一緒になって幸せだった。

 ゆり子は僕以上に周囲に反対されていた事を気にしてたらしいが、それを表には出さず、いつも笑顔だった。
 僕の下らない冗談によく笑ってくれた。一緒にいて幸せだと言ってくれた。

 子供は葵一人で十分だと思っていた。でも、ゆり子は僕の為に真一を産んでくれた。
 ゆり子が体調を崩したのはそれからだった。

 真一が一才になる前にゆり子は亡くなった。
 結婚生活は二年だった。

 いつの間にか僕はゆり子の年を越えてしまった。ゆり子より長く生きている事が悲しい。
 そして、少しずつゆり子への想いが薄れている事に気づく。
 例えば、昨日――。

 一瀬君と一緒にいてゆり子の事を忘れていた。
 以前の自分だったら信じられない。
 このままゆり子の事を考えなくなるんだろうか。
 一瀬君を好きになるという事はゆり子を忘れていく事なんだろうか。

 生きている事はなんて残語なんだろう。
 永遠だと思っていた想いが薄れていく。

 こんな気持ち知りたくなかった。
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