課長に恋してます!
 深呼吸をした。それから思い切って口にした。

「聞いたんです」
「何を?」
「娘さんが流産しかけたって」

 課長の表情が強張る。

「大丈夫なんですか?」
「うん。何とか落ち着いてる」
「そうですか。香川専務に聞いた時はびっくりしました」
「動揺させてしまったね。すまない。もしかして仕事に身が入らなかったのはそのせい?」
「……いえ」
「良かった」
「課長は大丈夫でしたか?」

 目が合うと課長が微笑んだ。

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

 課長の笑顔が作り笑いに見える。きっと私に心配させないように笑ったんだ。

 少しは弱い所も見せて欲しい。そんなに私って頼りない?

「どうしたの?」

 課長が静かに言った。

 いつもと変わらない課長が悲しい。
 私がどんなに想いを寄せても、課長との距離は変わらない。

 元上司と元部下。年上と年下。

 恋人にはなれないのかな。
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