課長に恋してます!
「そうですよね。私と課長は同じ会社で働いてるってだけですもんね。娘さんに言えないような関係ではありませんよね」

 喉の奥が熱くなる。

「すみません。変な事聞いてしまって」
 
 泣くな。
 泣いたら課長に迷惑がかかる。

「あ、コーヒー淹れなおして来よう」

 逃げるように台所に行った。
 課長の方を向けない。
 涙が滲んだ。

「こんな事でお引止めしてすみませんでした」

 唇が震えた。
 声が涙でかすんだ。

 誤魔化すように咳払いをして、薬缶を火にかけた。
 何かをしてなければ崩れそうだった。

「だけど、課長は残酷です。私の気持ちを知りながらどうして土曜日は会ったんですか?」
 
 薬缶にかかる青白い炎を見つめながら怒りが込み上がってくる。

「何とも思ってないなら断ればいいじゃないですか。ほっとけばいいじゃないですか」

 理不尽な怒りをぶつける。
 こんな事言ったら嫌われる。わかってても口は止まらない。

「気を持たせるような事なんでするんですか!」
 
 湯が沸いた。
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