課長に恋してます!
「お前にやる」  

 テーブルの真ん中に石上が白い箱を置いた。
 それはリングケースで、中にはダイヤモンドらしきキラキラの石が付いた豪華な指輪があった。

 見るからに高そう。

「ちょっと、これって……」

 思わず指輪を凝視する。

「見ての通り婚約指輪だ」

 こ、婚約指輪……?

「何の冗談?」
「冗談じゃない。プロポーズしてるんだよ」
「え! ぷ、ぷ、プロポーズ!!」

 眩暈がする。

 石上からプロポーズされるなんてありえない。
 いじめっ子で、無礼な奴で、デリカシーがなくて、いつも憎まれ口しか言わなくて……。

 どう考えても一番ありえない相手だ。

「俺が一瀬をもらってやるって言ってるんだよ。寿退社が憧れだったんだろ? 結婚相手は誰でもいいって言ってたじゃないか。お見合いで会って、いきなり初対面で結婚の方が気楽でいいって」

「それは……そうだけど」

 課長に会う前はそのような事を言ってた。
 自分に人を好きになる能力がないと思ったからだ。

「返事はすぐじゃなくていい。考えて欲しいんだ」
「石上も誰でもいいから私なの?」
「そんな訳ないだろ」
「じゃあ、好きなの?」
「当たり前だろ」

 びっくり……。

 え、本当に私を好きなの?

「嘘……」
「嘘じゃない。一瀬が好きなんだ」

 まさか石上から告白される日が来ようとは……。
 予想外過ぎて感情が追いつかない。

「これから証明しようか?」
「証明?」
「お前を一晩中抱くって事だよ」

 キャー。なんでそんな恥ずかしい事、平然と言うの!

 恥ずかしくて耳が熱い。

「バカ! 変態!」
「今日の所は勘弁してやるよ」

 石上が余裕たっぷりに笑った。
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