課長に恋してます!
 シャンパンゴールドのイルミネーションで染まる夜の街がバラ色に見える。

 課長が隣にいるだけでうきうきする。
 一緒に地下鉄の駅まで行って、電車に乗って、つり革に捕まって、隣の課長と時々目が合って。

 それだけで幸せ。
 
 特に話す事はなかったけど、課長と同じ空間にいられて嬉しい。
 だけど、あっという間に楽しい時間は終わる。

 最寄り駅について、改札を出て、「お疲れ様でした」と課長が言った。

「お疲れ様です」
「じゃあ」

 課長がチャコールグレーのコートの背を向けて歩き出す。

 最寄り駅は同じだけど、駅の出口は違った。
 課長と一緒に帰るのは改札まで。

 課長の背中がどんどん小さくなる。
 一週間ぶりに会えたのに。
 
――上村課長、もうこっちには戻って来ないらしい。
 
 昼間の石上の言葉が頭の中で再生される。
 胸の中がぐしゃっと搔き乱された。

 このまま別れたくない。石上が言った言葉の意味を知りたい。

「……課長」
 
「上村課長」

「上村さん!」

 大きな声で呼んだ。
 階段の登り口にいた課長の背中が止まる。
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