課長に恋してます!
「いつも飲み会の時はすみません。送ってもらって」
「いや、いいんだよ。同じ方向だから」
「送ってもらうばっかりだから、私、課長の家を知らないんですよね」
「そうだったっけ」
「はい」と言って一瀬君が頷いた。

 冷たい夜風が悪戯でもするように吹いた。
 風が一瀬君の頬をかすめ、肩まで長さのある黒髪を揺らす。
 白い首筋が見えてドキリとした。

 一瀬君の女性の部分をできるだけ意識しないようにしていたが、今夜は目に入ってしまう。

 艶のあるサラサラな黒髪も、色白で卵型の整った顔立ちも、細い首も、香ってくる甘い匂いも一瀬君が魅力的な女性だという事を主張してくる。


 そんな目で一瀬君を見ている自分が嫌だった。

 同じぐらいの娘がいる男が、19才も年下の部下を、女性として見てしまうなんて、なんて卑しいんだ。罪悪感で胸がいっぱいになった。

「課長?」

 一瀬君の声が不安そうに響いた。
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