課長に恋してます!
「待ちなさい」

 一瀬君を追いかけて走った。

 紺色のコートを翻して前を走る細い背中が泣いている気がする。

 しかし、追いつけなかった。

 年だな。
 49才という年齢を痛感する。
 
 それに比べて一瀬君はまだまだ若い。
 
 もしも、一瀬君と同じ年だったらと考えて、前にもそんな事を思った事を思い出した。

 もしもなんてないんだ。 
 こんな僕が一瀬君の側にいたらいけない。
 
 すぐに返事をしよう。
 それが一瀬君の為だ。
 
 マンションの前まで来ると、オートロックの自動ドアの前で一瀬君が待っていた。

「一番乗り♪」
 
 得意気に一瀬君が言った。

「一瀬君、やっぱり帰りなさい」

 一瀬君の顔から笑顔が消えた。

「どうしてですか?」
「僕は君に相応しくない。49才でおじさんだ。19才も年上なんだ。だから、君の気持ちに応えられない」
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