課長に恋してます!
 家に帰ってくると放心状態だった。  

 リビングのソファに座って、ぼんやりとDVDレコーダーのデジタル表示の文字が時を刻むのを見ていた。

 0:19  

 もうそんな時間になるんだと思った。
 着替える気にもなれず、コートもマフラーも付けたままぼんやりしてた。 
 勢いで持って帰って来たお弁当も手をつけなかった。 食欲なんてどこかに飛んで行ってしまった。  

 こういう時は視野を大きく持たなきゃ。課長がそう教えてくれた。 そう思うのに、同じ事をぐるぐると考えている。  

 “僕は君に相応しくない。”  

 “49才でおじさんだ。”  

 “19才も年上なんだ。”  

 “だから、君の気持ちに応えられない。”  

 課長の声がまた木霊した。

 桜色のお弁当箱が涙で二重に見える。
 蓋を開けると、おかずが綺麗に並んでいた。
 つくねのハンバーグに、ほうれん草と卵の炒め物、人参を煮たやつ、
 それから、きんぴらごぼう。

 全部、課長に分けてもらって好きだと言ったおかずだ。
 課長、覚えていてくれたんだ。
 
 なんで、覚えてるの……。
 なんで……。
 
 テーブルに突っ伏して泣いた。
 胸が苦しい。苦しくて堪らない。心臓が千切れそう。
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