課長に恋してます!
「それとも風邪か? ちょっと痩せたんじゃないか?」

 珍しく石上が眉頭を寄せた心配そうな顔をする。

「せんぱーい。大丈夫ですか? 顔色悪いですよ」

 向かいの席の、後輩の間宮かおりも加わってきた。
 心配してもらうのはありがたいが、メンタルが本当にダメな時はやめて欲しい。追い詰められるようにどんどん胸が苦しくなってくる。

「一瀬、熱があるんじゃないか?」

 石上がトーンを下げた声で言った。
 なんで構うの。ほっといて欲しいのに。

「大丈夫だから!」

 机に両手をついて勢いよく席を立った。
 それからオフィスを出て、下を向いたまま急ぎ足でトイレに駆け込んだ。

 ダメだ。まだ泣くな。

 ギリギリに堪えた涙を、トイレの個室で開放する。

 喉の奥が熱い。目の前のピンク色のドアがじわりと滲んで見えてくる。
 カラカラとトイレットペーパーを回して、三重に重ねたペーパーを目元に当てるけど、すぐに涙でいっぱいになる。

 お化粧が取れて、パンダみたいな顔になる。
 これ以上、泣いたらダメ……。

 でも、止まらない。
 体中が引き裂かれそうな痛みに上体を丸めて耐える。

 失恋した傷が生々しすぎる。

 どうやってみんな立ち直るの?
 どうやって忘れるの?

 課長、教えて下さい。
 課長、助けて下さい。
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