課長に恋してます!
「飲みに行くぞ」

 何とか定時まで持ちこたえて、帰ろうとしたら、急に石上に誘われた。
 とてもじゃないが今日はメンタルが持たない。
 断ろうとした時、課長の送別会だと言われてドキッとする。

「送別会?」
「上村課長、香港支社に異動になるんだよ」

 嘘……。聞いていない。

 もうオフィスで上村課長の姿を見る事も出来なくなる。
 血の気が引いていく。バッグを持つ指先が震える。

「おい、一瀬、大丈夫か? 真っ青だぞ」

 石上が首を傾けて心配そうに私の顔を覗き込んでくる。

「……びっくりして」
「聞いてなかったのか? 先週、そういう話になったらしい。急な異動らしいんだ」
「いつから香港なの?」
「明後日だって聞いてる」
「……あさって」

 いきなり過ぎる。

 だから課長、昨日私をふったの? 

「送別会なんてしなくていいって言われたんだけど、世話になったし、出られる奴だけ出ようって事になったんだ。つーことで、出ろよ」
「……うん、わかった」

 明後日から香港だなんて……。
 もう課長に会えなくなる。

 涙を堪えるので必死だった。

 本当に今日は酷い日だ。
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