課長に恋してます!
 午後10時台の電車はそれなりにすいてて、座るまでは行かないが、余裕を持って立つことが出来た。

 隣に立つ、一瀬君の整った横顔を時々、盗み見るように見た。

 彼女は美人だ。
 色白で、目はパッチリとしてて、鼻筋が通ってる。
 黙ってると冷たそうに見えるけど、笑うと人懐こい顔になる。
 そして、酔うと甘えん坊になる。

 三年前の事が浮かぶ。

 カウンターで横に並んで二人きりで飲んだ夜。
 甘えてくる一瀬君がかわいかった。

 いい思い出をたくさん、一瀬君にもらった気がする。
 お弁当のおかずを交換したり、料理の話をしたり。
 間宮くんに一瀬君との話を「まるで主婦の会話ですね」って突っ込まれた事もあった。
 そう言われるぐらい料理の話はよくした。
 楽しかった。

 まさか最後に好きだと言ってくれるとは思わなかった。
 願う事は、一瀬君の幸せだ。
 どうか、一瀬君が素敵な人に出会えますように。

 最寄り駅で電車を降りて、一瀬君と改札まで行った。

「じゃあ、お疲れ」

 いつものように改札を出た所で、声をかける。
 それから目に焼き付けるように真っすぐ一瀬君の顔を見る。

 上司として、最後はきちんとした挨拶をしよう。

 体に気をつけて。

 そう言おうとした時、

「課長」と先に一瀬君が話す。
 別れの挨拶かと思ったが、「家に来ませんか?」と言われて、胸が高鳴った。
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