課長に恋してます!
「僕は19才の時に29才の彼女に会って、恋をした。だけど、学生だったから見向きもされなくてね。社会人になっても諦めきれなくて、一緒に香港に行って欲しいって頼んだ」
「香港?」
「今の会社に就職して、一年経った頃、香港行きが決まったんだ。その時は海外事業部にいて、同期で入った香川専務と一緒に香港行きを命じられたんだ」
「それで香港に来てくれたんですか?」
「いや、無理だって言われた。だから、僕が香港に行くのを辞めた。香川には出世できなくなると止められたが、彼女しか見えなかったんだ」
「……出世よりも奥さんだったんですか」
「彼女の存在はその時の僕の全てだったんだ。それで、妻に同じ事を言った事がある。『僕が君と同じ年だったらいいのか』ってさ」
「じゃあ、課長は私の気持ちがわかりますよね?」
一瀬君が真っすぐにこっちを見る。
年の差なんて関係ないと言える、一途な瞳だ。
妻に夢中になっていた頃の自分を思い出す。
彼女以外、目に入らなかった。
「わからないな。君の気持ちを理解できる程、もう若くないんだ」
もう僕の恋は、妻が亡くなった時に終わっている。
あの頃のように人生の全てをかけて愛する情熱は残っていない。
「わからなくていいです! 年なんて関係ありません! 課長が好きなんです!」
泣きそうな顔をした一瀬君に胸がしめつけられた。
もしも、同じ年だったら抱きしめているだろう。
でも、僕ではダメなんだ。
49才は年を取り過ぎた。
「香港?」
「今の会社に就職して、一年経った頃、香港行きが決まったんだ。その時は海外事業部にいて、同期で入った香川専務と一緒に香港行きを命じられたんだ」
「それで香港に来てくれたんですか?」
「いや、無理だって言われた。だから、僕が香港に行くのを辞めた。香川には出世できなくなると止められたが、彼女しか見えなかったんだ」
「……出世よりも奥さんだったんですか」
「彼女の存在はその時の僕の全てだったんだ。それで、妻に同じ事を言った事がある。『僕が君と同じ年だったらいいのか』ってさ」
「じゃあ、課長は私の気持ちがわかりますよね?」
一瀬君が真っすぐにこっちを見る。
年の差なんて関係ないと言える、一途な瞳だ。
妻に夢中になっていた頃の自分を思い出す。
彼女以外、目に入らなかった。
「わからないな。君の気持ちを理解できる程、もう若くないんだ」
もう僕の恋は、妻が亡くなった時に終わっている。
あの頃のように人生の全てをかけて愛する情熱は残っていない。
「わからなくていいです! 年なんて関係ありません! 課長が好きなんです!」
泣きそうな顔をした一瀬君に胸がしめつけられた。
もしも、同じ年だったら抱きしめているだろう。
でも、僕ではダメなんだ。
49才は年を取り過ぎた。