課長に恋してます！

　電車を降りて、石上に教えてもらった、登録したばかりの香港支社の番号を出した。
　
　就業時刻はとっくに過ぎてる。
　いない可能性の方が高い。

　でも……。

　それでも課長の声が聴ける可能性があるかもしれない。
　酔った勢いで思い切って通話ボタンを押した。

　中国語の音声が流れ、次は英語で本日の営業は終了になりましたというアナウンスが流れた。

　機械的な女性の声だった。

　当たり前か。
　諦めて電話を切ろうとした時、

「喂(ワイ)？」

　男の人の声がした。

「あ、あの……ミスターカミムラ、プリーズ」
「カミムラ？」
「イエス」
「カミムラ。ゴーホム。ヒー、キャッチ、ア、コールド」
「Mr.kamimura catch a cold？」
「イエス。イエス」

　課長が風邪をひいて、家に帰ったという事がわかる。
　電話に出た男の人は、中国語なまりの英語で、課長がすごく悪い風邪をひいてて、一人暮らしだから心配だと言った。

「Thank you」
　5分ぐらい話して電話を切った。