課長に恋してます!
「課長、食欲ありますか?」
「少し」

 一瀬君はキャリーバックを開け、レトルトのおかゆとか、柚子茶とか、梅干しとかを取り出した。

「あの、課長にお土産と思って日本の物を持って来たんです」
 床に並べられた品物を見ていたら、一瀬君が言った。

 僕にお土産まで用意してくれていたのか。
 一瀬君の心遣いがありがたい。

「今、おかゆ用意します。キッチンお借りしますね」
 一瀬君がバタバタと台所の方に向かう。

 不覚にもちょっと涙ぐみそうになった。
 自分の為に一瀬君がキッチンに立ってくれるのが嬉しい。
 甘えてはいけないと思うが、もう少しだけ甘えたい。

「お待たせしました」

 一瀬君が粥を入れた器と、箸をテーブルに置いた。
 梅干しが乗った粥はさっぱりとして食べやすかった。

 あっという間に食べ終わり、食後に柚子茶を作ってもらった。
 はちみつ入りの柚子茶はほんのり甘く、柚子の風味がさっぱりして、飲みやすかった。

「まだ顔が真っ赤ですね。失礼します」

 細い指が額に触れる。ひんやりとして心地いい。
 夢でも幻でもなく、本当に一瀬君がいるんだ。それだけで心が安らぐ。

 僕はかなり一瀬君に会いたかったようだ。
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