課長に恋してます!
 次の日は昼頃、目を覚ました。
 
 部屋に置かれた、スチーム付きの電気ストーブを見て驚いた。
 寝返りを打つと、ベッドの中で何かに当たる。
 取り出してみると、湯たんぽだった。

 電気ストーブに、湯たんぽ。

 どちらも見覚えのない物だ。
 まさか、一瀬君が……。

 ベッドから起き上がろうとした時、寝室のドアがコンコンと叩かれた。
「失礼します」と言って、エプロン姿の一瀬君が入って来る。
 手には見覚えのないオレンジ色の盆を持っていた。

「あ、課長、起きたんですね。おはようございます」

 近くに座った一瀬君が言った。

「スポーツドリンクと、お昼ご飯持ってきました」

 一瀬君がベッドの側のテーブルに置いてくれた。

「和風だしで作ったおじやです」

 鍋から茶碗によそってくれた。カツオだしのいい匂いがする。 卵でとじたおじやは、ほくほくの湯気が流れ、見た目にも美味しそうだ。

 だが一瀬君に、ここまでしてもらっていいんだろうか。
 昨夜は気にならなかった事が急に気になってくる。

「どうしたんですか?」

  黙ったままでいると、一瀬君が様子を伺うような目を向けた。

「……一瀬くん」

 自分でも驚く程、酷く嗄れた声が出た。

「ごめんなさい。声が出ないんですね。課長、うがいしますか?」

 頷いて、一瀬君に支えられるようにして、洗面所まで行った。
 一瀬君がうがい用に緑茶を用意してくれた。

「カテキン効果で、楽になりますよ」

 言われるまま、少し熱い緑茶でうがいをした。
 何度かうがいをして、何とか声が出た。

「ありがとう」

 声を出すと、一瀬君が笑顔を浮かべた。
 その笑顔が眩しい。
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