課長に恋してます!
 昼を食べてから夕方までまた眠った。
 目を覚ますと、一瀬君の顔があってドキッとする。

 一瀬君はベッドに頭だけ乗せて安らかな顔をして眠っていた。
 手にはタオルを握りしめて。
 何かをしてくれている途中のようだった。

 昨日からきっと、一睡もする事なくついててくれたんだ。
 一瀬君にどんなに助けられた事だろう。感謝の気持ちで胸が熱くなる。
 不覚にも目の奥が潤んだ。

 一瀬君の存在が昨日よりも、いや、日本にいた時よりも大きくなっている。
 そっとベッドの上に乗る彼女の白い手を握った。

 この手を離したくない。ずっと繋いでいたい。

 しかし――。

 僕は年を取り過ぎてる。
 彼女の未来とか、ご両親の事を思ったら、僕ではダメだ。
 葵が、僕のような年上の男を連れて来たら、全力で反対するだろう。
 きっと一瀬君のご両親も同じ事を思うはずだ。

 僕では一瀬君を幸せにできない。
 だから、ちゃんと距離を取ろう。そうする事が一瀬君の為だ。
 茜色に染まる子どものような寝顔を眺めながら思った。
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