課長に恋してます!
 課長の奥さんは課長より10才年上だって言ってた。
 出世も捨てて、奥さんと一緒になった話を思い出した。

 すごく好きだったんだろうな。
  物静かな課長が奥さんの為にそこまでするんだから。
 
 敵わないな……。

 泣かないって決めたのに涙腺が緩んだ。
 やっぱり好きだ。
 諦められない。

 だけど、もう自分の気持ちを押し付ける事はしない。
 そう決めて、香港に来た。
 ただ、課長の為に何かをしようと思った。
 課長を困らせるような事はしない。

 だから、大人しく部屋を出て来た。
 やんなっちゃう。
 課長の顔を見ただけで、そんな誓いはあっさり消える。

 もっと側にいたかった。
 いろんな話をしたかった。

 思いを断ち切るようにエレベーターに乗った。
 これで私の恋はおしまい。

「一瀬君!」

 エレベーターのドアが閉まりかけた時、課長の声がした。
 パジャマ姿の課長が走って来た。
< 75 / 174 >

この作品をシェア

pagetop