課長に恋してます!
 中環からタクシーを拾って、ビクトリアピークに向かった。
 香港島で一番高い山で、標高552mあると課長が教えてくれる。香港島と九龍半島の両方の景色が見えるらしい。
 いろいろと説明してくれるのが嬉しかった。
 
 香港に来てから沢山、課長の事を知った。
 パジャマ姿の課長とか、ちょっと頑固な所があるとか、歩く時は、さりげなく車道側を歩いてくれるとか、迷子にならないように手をつないでくれるとか、とにかくレディーファーストで対応してくれるとか、甘い物が好きな所とか、語学が堪能な所とか。

 日本にいた時も課長の流暢な英語を聞いた事は何度もあったけど、広東語まで話せるのは知らなかった。
 香港に来て一か月だとは思えないぐらい、課長はスムーズに店員さんと広東語で会話していた。
 片言しかわからないって言っていたけど、動じる事なくやり取りする姿が素敵だった。

 課長はどこの国でもやっていけそうだ。
 私なんて、日本を出たら右往左往してばっかり。
 言葉がわからない事がこんなに大変だとは思わなかった。

「着いたよ」

 山頂について、タクシーを降りた。
 観光客が大勢いて、不安そうにしていると、課長がまた手を繋いでくれた。
 握った手が大きくてあったかいな。
 
 また課長の事を好きになった。
 諦めようと思っていたのに。
< 85 / 174 >

この作品をシェア

pagetop