課長に恋してます!
 展望台から輝く街を見下ろした。

 煌びやかに輝く高層ビル群に吸い込まれそうになる。
 さすが世界三大夜景の一つ。

「どう? 100万ドルの夜景は?」

 右側に立つ課長が優しい表情を浮かべてこっちを見る。

「すごいです! なんか万華鏡の中みたいにキラキラで」
「万華鏡か。なるほど」

 クスッと笑った口元に浮かんだ笑い皺に胸がキュンとする。
 景色だけで胸がいっぱいなのに、隣に大好きな課長がいる。

 なんて贅沢な時間なんだろう。
 
 嬉しい気持ちがどんどん込み上げてくる。
 生きててこんなに幸せだって思った事はない。
 
 こんなに幸せでいいのかな。
 課長をどんどん好きになっていいのかな。
 
「寒くない?」  

 目が合うと課長が聞いてくれた。  
 今日、何度も聞いてくれた。
 優しい声で。
 優しい瞳で。
 頭一つ分背の高い課長の横顔を見上げる度にドキドキする。

「大丈夫です。課長は大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫」  

 頬を上げて笑う課長の優しい表情をずっと見ていたい。
 
 今の時間が止まればいいのに。
 このままずっと課長と一緒にいられたらいいのに。

 日本に帰りたくない。
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