課長に恋してます!
 月曜日。

 風邪も治り、出社した。
 中環駅から徒歩5分の、40階建てのオフィスビルに香港支社はあった。
 入口のゲートで入構証をタッチして、社内に入った。

 所属する繊維事業課は9階にあった。
 仕事内容は中国全土にある契約した紡績工場を管理したり、アパレル商品の輸出をしたり、日本企業への橋渡しをする事だった。

 三友商事は日本で三番手ぐらいの総合商社だった。
 主な業務は商品の仲介をする事にある。
 やりがいのある仕事だった。
 
 デスクに座ると、王さんが声をかけて来た。
 王さんは繊維事業課の係長だ。同じ年で、高校生ぐらいのお子さんがいる。
 強く自分の主張を通すが、基本的に人あたりがいい。

「上村さん、風邪はもう大丈夫?」
「ご迷惑おかけしました。もう大丈夫です」
「よく効く漢方薬持って来たよ。風邪の後とか、体力が落ちてる時に飲むといいよ」

 王さんが漢方薬が入ってる薬瓶をくれた。
 中には灰色の粉末状のものが入っていた。

 詳しい効能について二十分話を聞くが、広東語なのでよくわからない。
 話を切るタイミングがつかめなく、困ってると総務課の青木さんがやって来た。

「上村さん、書類の確認お願いします」

 綺麗な日本語を聞いてほっとする。

「青木さん、一瀬君がお世話になったそうで。ありがとうございました」

 普段、あまり表情を変えない青木さんがこちらを見て微笑む。

「一瀬さんって、とっても可愛らしい人ですね」

 思わず頬が緩む。
 青木さんにも一瀬君の可愛らしさをわかってもらえて嬉しい。

「うん。そうなんだ」
 誇らしい気持ちで相槌を打った。
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