課長に恋してます!
 次の日からは三日間の予定で上海に出張だった。

 基本的に上海と香港の行き来をしている。
 契約している紡績工場の半分が上海にある為だった。

 飛行機でおよそ二時間半。同じ国内だが、一国二制度を実施しているので、香港から上海に行くには国際線で、パスポートも必要になる。
 気温は日本と同じぐらいで、二月の後半でも寒い。

 コートと、マフラーは必須で、香港と同じ感覚で行くと痛い目にあう事を最初に訪れた時に知った。

 今日は日本の本社から人が来る事になっていた。
 
「上村課長、お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」

 紡績工場に着くと、コートを脇に抱え、グレーのスーツ姿の石上君が丁寧なお辞儀で出迎えてくれた。

 彼は好青年だ。
 学生時代は野球部に所属してて、目上の者には礼儀正しく、その場の空気も素早く読んでくれる。

 日本から誰が来るか知らされていなかったから、少し心配していたが、石上君なら安心だ。
 工場の人間に失礼な態度を取る事はないだろう。
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