課長に恋してます!
「なんで髪切ったんですか?」

 昼休み、休憩スペースでお弁当を食べてると、間宮に訊かれた。

「だから、気分転換だって」
「本当にそれだけですか?」

 いちご牛乳を飲みながら、間宮がせまってくる。
 今日も間宮の顔は綺麗なメイクがされている。入社した頃はギャルっぽいメイクだったけど、最近は落ち着いたナチュラルメイクだ。とっても可愛い。きっと間宮はモテるだろうな。 

「他にどんな理由があるのよ」
「……失恋?」

 間宮が苦笑いを浮かべる。

「石上みたいな事言わないでよ」
「だって、入社して四年ですけど、先輩が耳出すぐらい短くしたのって初めて見ました。だから余程の事があったのかと」 
「短い方が朝寝坊できるでしょう。髪を整えるのがめんどくさくなったの」
「先輩、なんか女捨ててません?」
「間宮も30になったらわかるわよ。いつまでもメイクとか髪型に気を遣ってられないのよ」
「そんなに時間使ってませんよ。ヘアメイクは一時間で済ませてますから」
「一時間もかけてるの!」
「普通ですよ」
「私なんて15分なのに」
「先輩は元々綺麗な顔立ちですから、あんまりいじらなくてもいいんじゃないですか」
「今、褒めたの?」
「はい。だから、卵焼き下さい」

 間宮がにんまりと笑う。
 そんな顔されては断れない。

「どうぞ」

 間宮にお弁当箱を向けた。
 間宮の割りばしが伸びる。

「先輩の卵焼き美味しいんですよねー。毎朝、作って来て凄いですよねー。お弁当箱もピンクで可愛いですね」
「このお弁当箱はもらい物なの」

 課長にもらったお弁当箱を使っていた。
 桜色のお弁当箱はすっかりお気に入り。

 ふと、課長と休憩スペースで一緒にお弁当を食べた事を思い出した。
 課長の甘辛く味付けされた、きんびらごぼうが美味しかったな。

「先輩、どうしたんですか? 目がうるうるしてますけど」

 間宮が心配そうに整った栗色の眉を寄せる。
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