秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
にこやかに話すふたりを見て、以前桜が言ったことを思い出していた。


『私、もう『彼女』じゃないから、他の誰かがいつかあなたの隣を歩くんだよね・・』


俺にとっても、同じだった。
他の誰かが桜の横にいても、何の不思議も無いんだ。


・・・・もしかして桜が支えたい男・・って。

ふと、兄貴が振り返った。


「直生・・。桜さん、直生には桜さんから?」

「ええ、私が話します」

「じゃあ、頼みます。何かあれば、いつでも連絡して」

「はい」


兄貴が近づいてきて、すれ違いざまに肩をポンと叩く。


「今後ともよろしくな、弟」

「えっ」


呆然としていると、桜が近づいてきた。


「直生・・少し、時間もらえる?」

「え? ああ、うん」


昼食がまだだった桜と俺は、近くのラーメン屋に入った。

向かい合って顔を見ながら食べるのは耐えられそうになく、カウンターのあるラーメン屋を選んだ。


注文した後にしばらく沈黙が続いたものの、俺からは何を話したらいいか分からず、黙っていた。


「直生」


沈黙を破ったのは桜だった。


「会社のこと、勝手に決めてごめん」

「・・いや、桜の・・社長の判断だから・・」

「うん・・そうなんだけどね」

「そんなことより俺が聞きたいのは・・」


桜が誰を支えたくて、会社も社長も手放す決意をしたのか・・だ。
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