秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
「ちょっと待て・・桜。自分が何を言ってるのか分かってるか? 俺に社長って・・どうして・・」

思いもしないことを言われて、さすがに俺も混乱した。

『支えたい人が・・ずっとそばにいたいと思う人が・・いて・・』
『その人に、次の社長もお願いするつもりで・・』
『グループ会社になったら、直生に、社長をやってもらうことはできないか・・って』

つまり・・。
話を全部つなげると・・。

俺・・なのか?
桜が支えたい人・・。

いや、でも、俺が社長である桜を守って、支えて、ずっとそばにいたはずなのに・・。
いったいいつ、それが逆転したんだ?

「どうしたの、直生? 私、そんなに変なこと言ったかしら?」

クスクスと笑う桜と、全く状況が理解できていない俺。

「ねぇ直生、今日はもう帰りましょうよ。ゆっくり話もしたいから」

「そう・・だな。そうするか」

俺たちは店を出てタクシーに乗り、距離的に近かった俺の自宅に向かう。
その途中で、ふと心に浮かんだ疑問を桜にぶつけた。

「桜、もしかして『社長』嫌だったのか?」

「そんなことないわ。責任は重かったけど、やりがいがあった。直生がいつも『秘書』として支えてくれて、すごく心強かったし」

「そう・・か」

だとすると、余計に理由が分からない。
辞める必要なんて無いはずなのに・・。

どう問いかければ、このモヤッとした気持ちが解消するのか分からないまま、桜と俺は到着したタクシーから降りた。

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