秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
なぜ俺が山脇物産で秘書をすることになったかを、桜と室長にかいつまんで話した。


「なるほどねぇ。前社長と服部会長が・・桜さんや息子たちを思って・・・・そうだったんですか」

「でも、違和感無かったの? 別人格でしょ『秘書』と『専務』じゃ」

「それほどでもないよ。完全に別ステージにいたわけだから、混乱することもなかったし」

「おい服部、社長にタメ口は・・」

「いいのよ、今は『専務』だから。ふふ」

「何だかやりにくいんですけど・・」


ブツブツぼやいている室長をよそに、藤澤親子をどうするか、桜と話し合った。


「契約は切るわ。室長に通達書を手配してもらう。また新しい提携先を探すことになるのは痛いけど、他の提携先や銀行に示しがつかないから」

「いいのか?」

「もちろんよ」

「・・俺より、桜の方が手厳しいんじゃないか?」

「当然よ。私は『社長』なんだから」

「怖〜い・・アハハハ」


桜は、藤澤をどうするつもりだろうか。

藤澤自身は、会社に直接ダメージを与えるようなことはしていない。

俺としても、俺の『正体』を明かすだけで充分なんじゃないかと思っている。

知れば、おそらくもう何もしてこないはずだ。

甘い・・か?


「直生・・藤澤には私が話すわ」

「えっ」

「藤澤は、お父さまの会社と直接関係は無いかもしれないけど、契約を切ると決めたのは私だから。それと・・」

「それと?」

「直生は藤澤の言うことに従うから、また『別れる』って言われたら困るしね」


・・俺は苦笑いするしかなかった。
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