秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
俺は山脇物産のオフィスを出て、ブラブラと外を歩いた。

店舗のショーウィンドウに写る自分を見て、何が『カッコいい』のだろうと思った。


自分の"居場所"にすら迷う、俺のどこが・・。

見た目だけじゃ、何の意味も無い。


そのままどこかに行く気にもなれず、道沿いにあるチェーンのコーヒーショップに入った。

レジに向かうと、そこにいたふたりの女性が俺を見て落ち着かなさそうにしている。


女性の視線を意識するのも、久々だと思った。

それくらい、本当に桜のことしか考えない時間を過ごしていたのか・・。


よそ行きの笑顔と穏やかな声で注文を済ませ、店の奥の席に座った。

ジャケットを脱ぎ、少しだけネクタイを緩める。


『キャー』という女性の声に、俺は苦笑いした。

桜は、こういう分かりやすい反応はしないよな。穏やかに『カッコいい』と言うくらいだ。


まだ湯気の立つコーヒーを飲み、窓の外に目を向けながら深く息を吐いた。


『直生が、そばにいてくれるだけでいい』


ふと、桜の言葉を思い出す。


それはどういう立場で?
それはどういう場面で?


あ・・・・。

俺にはひとつだけ、あえて考えないようにしてきたことがあった。

桜が身動きしづらくなったり、お互いの判断がブレるのを避けるために。


そう・・桜との結婚だ。


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