秘書の溺愛 〜 俺の全てを賭けてあなたを守ります 〜
「専務!」


表のエントランスで西川が待っていた。


「どうした? 兄貴に何かあったのか?」

「違います! うちの社長じゃなく・・山脇社長が・・」


え? 桜?


「いや、でも、さっきまで一緒に・・といっても2時間くらい前か・・」

「じゃあ、その後です。15分ほど前に会長のところへいらっしゃって」

「・・親父の?」

「とにかく急いでください。さっきお茶をお持ちしたら、山脇社長が『会社を譲渡する』と仰ったように聞こえて・・」

「えっ」


会社を譲渡?
どこかに売り渡すのか?
桜は社長を降りるということか?


藤澤親子とのことは収束しているし、銀行との話し合いも上手くいかないはずがない。


「どうしてだ・・」


俺は足早に会長室へ向かい、ノックもせずにドアを開けた。


「桜!!」

「なんだ直生、来てたのか」

「あ・・西川に聞いて」

「直生どうしたの? そんなに慌てて」


涼しい表情で、桜が俺を見ている


「慌てるだろ。桜が会社を譲渡するつもりだと西川に聞いて・・」

「何だ西川、おまえ立ち聞きしてたのか?」

「あ、いえ、会長、そういうわけでは・・お茶をお持ちした帰りにたまたま聞こえてしまって・・申し訳ありません」


部屋の隅で西川が恐縮している。


「ありがとう。それで専務を呼んでくれたのね。ちょうど良かったわ・・いま会長にお伝えしたことを、専務にもお話ししましょう」
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