身代わり花嫁として嫁ぎましたが、どうやら旦那様も身代わりのようです?
 どちらにしても、リカルド様がお母様に毒が盛られた理由を明らかにしてくれたことには感謝しよう。リカルド様のおかげで主治医とシビルは捕えられて罪が暴かれ、お母様も回復したのだから。

 私は気持ちを切り替えて、国王陛下の近くに進んだリカルド様の背中を見つめた。


「陛下、それでは逃走したソフィ・ヴァレリーをお連れしましたので、この場に連れて来てもよろしいでしょうか」

「許可する」


 リカルド様は謁見の間の入口扉の方に目をやった。近くにいた騎士と目配せをして、その騎士が扉から外に出て行く。きっとロンベルクからウォルターが連れてきたソフィを、謁見の場に通すのだろう。
 同じように罪を犯したとは言え、ソフィは貴族。シビルは平民だ。平民である上に犯罪者であるシビルが国王陛下に直接謁見することなど不可能。この場にはソフィだけが連れて来られる。

 何が何だか分からないと言った様子で狼狽するお父様は、陛下の顔と入口扉の方向をキョロキョロと見回していた。そんなお父様に、リカルド様が書類を手渡す。

 それは彼女の罪状だったのだろう。お父様はワナワナと震える手でそれをつかみ、必死で読み進めている。

 私がリカルド様に聞いた、シビルたちがお母様に毒を盛った事件の真相が書かれているはずの罪状を読み終わったお父様が悲痛な声で叫んだ。 


「……ちょっとお待ちください!」

「ヴァレリー伯爵、どうされましたか?」


 リカルド様の声は冷たい。


「ソフィは私の子です! お恥ずかしながら、確かに私はシビルを愛妾としておりました。そのシビルが生んだ子がソフィです。ソフィは私と同じ銀髪ですし、年齢的にも私の子だと……ここに書かれている染物屋の男とは無関係だと、信じています!」

「ヴァレリー伯爵……どうやら私の調査結果を信じて頂けないようですね。大丈夫ですよ、証拠をお見せしましょう」


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