身代わり花嫁として嫁ぎましたが、どうやら旦那様も身代わりのようです?
外では騎士たちが訓練をしている最中のようだった。木剣を振るい、攻撃と防御に分かれて練習している。よく見ると、女性騎士もチラホラと見えた。
(女性騎士……かっこいい!)
女性騎士が木剣で相手の攻撃を受け止める姿はとても凛々しくて、自然と彼女たちの真似をしようと手や足が動いてしまう。しばらくそうして外を眺めていると、私の後ろでバサバサと書類が床に落ちる音がした。驚いて振り返ると、そこにはあの人が立っていた。
……そう。
私のことを愛するつもりがないと宣言した、旦那様だ。
今日も今日とて、ひどく狼狽している。
書類など誰かに運ばせればよいのに、自分で大量に抱えていたらしい。落としてしまった書類を拾うのも忘れて、私を見て驚いている。
昨日の今日ですものね。さすがに罪悪感でいっぱいかしら?
「愛するつもりはない」と言われたけれど、別に私は怒っていないのに。旦那様を安心させようと思って、思い切り笑顔を作って旦那様の方に近付いた。
「旦那様、書類を拾うのを手伝いますね」
「ヴァレリー嬢……」
「もう結婚いたしましたので、どうぞリゼットとお呼びください」
「リゼット……そうだな、もう結婚したのだった」
良かった、結婚相手はソフィじゃなくてリゼットであると、ちゃんと伝わっていたようだ。落ちた書類を拾い集めて、旦那様に手渡した。彼はありがとう、と小さく呟く。
「旦那様、私のことをお嫌いなのは重々承知の上で一つお願いがございます」
「……別に嫌いというわけでは」
眉毛をピクっとさせた旦那様は、私から離れようと一歩後ろに下がった。
「実は、道に迷いました……私の部屋がどこにあるのか教えてください」
「ま、迷ったのか?」
「はい……申し訳ありません」
「そうか……確かにこの屋敷は分かりづらい」
そう言って旦那様は、何も言わずに歩き始めた。
少し行ったところで振り返り、ついて来るように目配せする。
途中で別の使用人とすれ違い、旦那様はその使用人に私を案内するように言って、立ち去ってしまった。その時私はちゃんと見ていた。彼がその使用人に、優しい笑顔で話しかける姿を。
(あんな表情もできるんじゃないの)
私に対してはどう接していいのか分からないといった様子の旦那様。でも、こうして見え隠れする優しい笑顔。
彼は一体どういう人物なのか。
それが私には分からなかった。
(女性騎士……かっこいい!)
女性騎士が木剣で相手の攻撃を受け止める姿はとても凛々しくて、自然と彼女たちの真似をしようと手や足が動いてしまう。しばらくそうして外を眺めていると、私の後ろでバサバサと書類が床に落ちる音がした。驚いて振り返ると、そこにはあの人が立っていた。
……そう。
私のことを愛するつもりがないと宣言した、旦那様だ。
今日も今日とて、ひどく狼狽している。
書類など誰かに運ばせればよいのに、自分で大量に抱えていたらしい。落としてしまった書類を拾うのも忘れて、私を見て驚いている。
昨日の今日ですものね。さすがに罪悪感でいっぱいかしら?
「愛するつもりはない」と言われたけれど、別に私は怒っていないのに。旦那様を安心させようと思って、思い切り笑顔を作って旦那様の方に近付いた。
「旦那様、書類を拾うのを手伝いますね」
「ヴァレリー嬢……」
「もう結婚いたしましたので、どうぞリゼットとお呼びください」
「リゼット……そうだな、もう結婚したのだった」
良かった、結婚相手はソフィじゃなくてリゼットであると、ちゃんと伝わっていたようだ。落ちた書類を拾い集めて、旦那様に手渡した。彼はありがとう、と小さく呟く。
「旦那様、私のことをお嫌いなのは重々承知の上で一つお願いがございます」
「……別に嫌いというわけでは」
眉毛をピクっとさせた旦那様は、私から離れようと一歩後ろに下がった。
「実は、道に迷いました……私の部屋がどこにあるのか教えてください」
「ま、迷ったのか?」
「はい……申し訳ありません」
「そうか……確かにこの屋敷は分かりづらい」
そう言って旦那様は、何も言わずに歩き始めた。
少し行ったところで振り返り、ついて来るように目配せする。
途中で別の使用人とすれ違い、旦那様はその使用人に私を案内するように言って、立ち去ってしまった。その時私はちゃんと見ていた。彼がその使用人に、優しい笑顔で話しかける姿を。
(あんな表情もできるんじゃないの)
私に対してはどう接していいのか分からないといった様子の旦那様。でも、こうして見え隠れする優しい笑顔。
彼は一体どういう人物なのか。
それが私には分からなかった。