身代わり花嫁として嫁ぎましたが、どうやら旦那様も身代わりのようです?


「奥様」

 背後からウォルターの声がした。
 彼は、私のことを怖がらない数少ない使用人の一人だ。

「ウォルター、ごめんなさい。あなたの忠告を聞けば良かったんだけど、私ったら勝手に動いてしまったわ」

「そうでしょうね」

 ウォルターは言葉少なに答える。
 きっとあなたは旦那様とカレン様の過去を知っていて、私を遠ざけようとしたのね。

「ウォルター」
「はい、奥様」
「私の部屋はどこ?」
「……はい、お連れいたします」

 こんな時にまで屋敷内で道に迷ってしまう私。格好悪くてちょっと恥ずかしい。部屋に戻って一息ついて、お茶を飲んで。一時間くらい経った頃。

 私の部屋の扉をノックする音がした。

 いけないわ、ついクセで扉の前に椅子をたくさん置いてしまった。急いで椅子をどけて扉を開けると……そこに立っていたのは旦那様だった。
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