身代わり花嫁として嫁ぎましたが、どうやら旦那様も身代わりのようです?
「旦那様、せっかくの機会ですので一つ質問してもよろしいですか?」
「……なんだ」
「毎朝私の部屋にスミレを贈って下さるのは、旦那様でしょうか?」
旦那様はタオルの中でぶっと吹き出し、小さくボソッと呟いた。
「…………リゼットは花が好きだろう。髪の色も菫色だからちょうど良いと思って」
「まあ……やっぱりそうだったのですね。お花は大好きですし、お気持ちが嬉しいです。ありがとうございます」
タオルに包まれて表情が見えないままの旦那様。私の御礼の気持ちが伝わっていたらいいけど。
とりあえず、スミレの贈り主がリカルド様であることは分かった。過去に恋人同士だったカレン様ともいまだに距離が近くて親密なのだということも分かった。
でも、私のことを愛するつもりがないと言いながら、毎朝スミレを送ってくれる、その理由は何?
「……明日」
「え? 明日……どうかされましたか?」
やっとのことでタオルから出てきて、亜麻色の髪の毛がボサボサになったまま旦那様が言う。
「雪解けしたから、一度ロンベルクの森に入って調査をしてこなければいけない。明日の朝はスミレを贈れないから……申し訳ない」
「え……?」
何だか律儀な旦那様を見て、笑いがこみあげてしまった。私と目も合わせない彼は、不機嫌そうな顔をしているのに髪の毛がボサボサだ。色んなギャップがおかしくなって、ついつい吹き出してしまう。
「なっ……何か変なことを言ったかな」
「いいえ、旦那様は律儀なのか冷たいのか優しいのか、全然分からなくておかしくなってしまいました。笑ってごめんなさい」
「……もし良ければ、一緒に行くか?」
「え? 私も……ロンベルクの森にですか?」