身代わり花嫁として嫁ぎましたが、どうやら旦那様も身代わりのようです?
「ところで、リゼットさんは……リカルドのことどう思っているの?」
カレン様が小声で聞いて来た。
旦那様とハンス様に聞かれないように聞いて来たのは明らかだけど、それを聞いてどうする気? もしかして……カレン様はまだ旦那様のことを?
「どうもこうも特になくて……」
「えっ? 好きとか嫌いとか、ほら、男性としてどう思うかとか」
「旦那様とはほとんどお話したことがありませんので……それに旦那様は他にたくさんお相手がいらっしゃるかと」
私ったら。
少し嫌味だったかしら。
仮初の妻の私よりも、よっぽどカレン様の方が旦那様のことを知ってるでしょ?
「……そうなんだ。リゼットさんは、別にそれでいいの?」
このままでいいのか、嫌なのか。
そもそも私に何かを選択する余地などないのに。
一番大切なものを守ろうとしたら、私はここに来ざるを得なかった。旦那様も、国王陛下の命である結婚相手を断れなかった。ただそれだけなのだ。
自分の意思とは関係なく勝手に決められた結婚のために、旦那様に行動を変えてほしいとお願いするなんて……私にそんな権利はない。
私だって旦那様に恋焦がれてここに来たわけでもなく、ただお母様を守りたかっただけなんだから。