身代わり花嫁として嫁ぎましたが、どうやら旦那様も身代わりのようです?
数年前、騎士学校を卒業した俺は、ロンベルク騎士団に入団した。同期だったリカルドやカレンも、同じ配属先だった。
隣国との国境には深い森があり、森を挟んだ両国はそこに住む魔獣の被害に頭を悩ませていた。数年かけてロンベルク騎士団は何とか魔獣を制圧したのだが、最後の戦いの最中、たまたま第二王子の目の前に立っていたリカルド・シャゼルが魔獣の爪で大怪我を負った。
リカルドに助けられたと思った第二王子が国王陛下に進言したおかげで、彼はロンベルク辺境伯に任命されることになった。
リカルドは驚いた。
自分はたまたま第二王子の目の前に立っていただけで、別に助けようと思って助けたわけではない。騎士として決して強いわけでもないのに、与えられた任務が重すぎると。
そもそもリカルドは文官志望だった。しかし代々武門の家系であるシャゼルではなかなかそれも許されず、意に反して騎士となったのだ。
彼は自分の名声をわざと落とすために、とにかく女遊びにのめりこんだ。いや、元々女グセは悪かったのだが、タガが外れた感じになった。こうなるともう止められない。
俺の助言も聞かず、リカルドは仕事も投げ出して色んな女の家……いや、男女構わず恋人の家を転々するようになっていた。
リゼットとの出会いは、リカルドが手を付けられなくなったそんな時期。
リカルドに説教するのにも嫌気がさして長期休暇で王都に戻り、たまたま訪れた食堂で見かけたのがリゼットだった。お年寄りの店主を助けてテキパキと働く姿に好感を持った。騎士団の仲間と食堂を訪れることもあったが、そのうち一人でも通うようになった。リゼットの顔を見るためだけに。
彼女への気持ちがハッキリしたのは、俺の誕生日の時。
「おい、ユーリ。お前今日誕生日らしいな」
仲間が俺にそんな話題を振ったのを聞いていたんだろう。リゼットがテーブルに食事を運んできた時に、俺の皿にだけ小さな花がいくつか飾られていた。
「お誕生日おめでとうございます!」
リゼットは花が咲いたような笑顔で言った。同じテーブルの仲間たちも俺も、驚いてリゼットの顔を見た。
「あ、ごめんなさい。先ほど、お誕生日だと話しているのが聞こえたので。おめでとうございます。そのお花はエディブルフラワーと言って、食べられるお花なんです。ぜひお食事と一緒に召し上がってみてくださいね」
その時の彼女の笑顔とペコリとお辞儀をして戻っていく姿に、一瞬で恋に落ちてしまった。ずっとリゼットの後ろ姿を眺めていた俺は、仲間からからかわれた。
たかが誕生日を祝われたくらいで……と、きっと周りのヤツらは思うだろう。でも、俺にとって誕生日の存在は他の人よりもずっと大きい。
妾腹だった俺は、自分の誕生日を家族に祝われたことがなかった。子供の言葉は残酷だ。「お前が生まれた日を、なんで俺たちが祝う必要があるんだ?」なんて、兄からは言われ続けた。おかげで誕生日は大嫌いだったし、祝われた記憶もない。俺は何のために生まれたのか……なんて、自分を責めた日もあった。
そんな一年で一番嫌な日が、彼女のおかげで特別な日になった。
隣国との国境には深い森があり、森を挟んだ両国はそこに住む魔獣の被害に頭を悩ませていた。数年かけてロンベルク騎士団は何とか魔獣を制圧したのだが、最後の戦いの最中、たまたま第二王子の目の前に立っていたリカルド・シャゼルが魔獣の爪で大怪我を負った。
リカルドに助けられたと思った第二王子が国王陛下に進言したおかげで、彼はロンベルク辺境伯に任命されることになった。
リカルドは驚いた。
自分はたまたま第二王子の目の前に立っていただけで、別に助けようと思って助けたわけではない。騎士として決して強いわけでもないのに、与えられた任務が重すぎると。
そもそもリカルドは文官志望だった。しかし代々武門の家系であるシャゼルではなかなかそれも許されず、意に反して騎士となったのだ。
彼は自分の名声をわざと落とすために、とにかく女遊びにのめりこんだ。いや、元々女グセは悪かったのだが、タガが外れた感じになった。こうなるともう止められない。
俺の助言も聞かず、リカルドは仕事も投げ出して色んな女の家……いや、男女構わず恋人の家を転々するようになっていた。
リゼットとの出会いは、リカルドが手を付けられなくなったそんな時期。
リカルドに説教するのにも嫌気がさして長期休暇で王都に戻り、たまたま訪れた食堂で見かけたのがリゼットだった。お年寄りの店主を助けてテキパキと働く姿に好感を持った。騎士団の仲間と食堂を訪れることもあったが、そのうち一人でも通うようになった。リゼットの顔を見るためだけに。
彼女への気持ちがハッキリしたのは、俺の誕生日の時。
「おい、ユーリ。お前今日誕生日らしいな」
仲間が俺にそんな話題を振ったのを聞いていたんだろう。リゼットがテーブルに食事を運んできた時に、俺の皿にだけ小さな花がいくつか飾られていた。
「お誕生日おめでとうございます!」
リゼットは花が咲いたような笑顔で言った。同じテーブルの仲間たちも俺も、驚いてリゼットの顔を見た。
「あ、ごめんなさい。先ほど、お誕生日だと話しているのが聞こえたので。おめでとうございます。そのお花はエディブルフラワーと言って、食べられるお花なんです。ぜひお食事と一緒に召し上がってみてくださいね」
その時の彼女の笑顔とペコリとお辞儀をして戻っていく姿に、一瞬で恋に落ちてしまった。ずっとリゼットの後ろ姿を眺めていた俺は、仲間からからかわれた。
たかが誕生日を祝われたくらいで……と、きっと周りのヤツらは思うだろう。でも、俺にとって誕生日の存在は他の人よりもずっと大きい。
妾腹だった俺は、自分の誕生日を家族に祝われたことがなかった。子供の言葉は残酷だ。「お前が生まれた日を、なんで俺たちが祝う必要があるんだ?」なんて、兄からは言われ続けた。おかげで誕生日は大嫌いだったし、祝われた記憶もない。俺は何のために生まれたのか……なんて、自分を責めた日もあった。
そんな一年で一番嫌な日が、彼女のおかげで特別な日になった。