失われた断片・グラスとリチャード
「お前は何ができる?」
「はい、掃除と洗濯ができます」

「ふん、なるほど・・」

リチャードは、端的な会話であったが、確かに、うるさくなさそうだと感じた。
質問に対して、簡潔に答える。

それはいい。
幽霊屋敷と噂されるグロスターの館に、なじんでいるかのように思えた。

「お前は、通いでくるのだな?」

「いいえ、住み込みと聞きました」

あの、ババァは・・
適当にいなしやがったな。

リチャードはまた不機嫌そうに、
舌打ちをした。

「物置小屋とか納屋でも、結構です。他の人がいなければ」

「ふーーん、お前は人が嫌いなのか」

リチャードはあごに手をやって、
少しばかり、珍しい生き物を見るように、視線をやった。

「はい」
答えは簡潔だった。

「私もこの館には、他人を入れない」
リチャードはそう言って、門番小屋を指さした。

< 13 / 73 >

この作品をシェア

pagetop