失われた断片・グラスとリチャード
彼は上流階級の子弟として、
言葉使い、アクセント、振る舞い、知性、
さまざまな教養を身にはつけたが、
いつも誰ともつるむことなく、
孤立して本を読んでいた。

母親が娼婦であること、
グロスターの正式な嫡男でないこと、出自の事で、
彼の成育歴に影を落としたのは
確かだ。

そして
20歳の時に乗馬事故で、
足と腰を骨折して、片足が不自由になり杖をついて歩く。

リチャードの事故後、
グロスター家の歴史、伝統に
泥を塗りたくるような事を、
多く彼は起こした。

当主であるリチャードは
貴族としての振る舞い、社交をしたが、貴族社会からは
村八分にされていると、いった方が正しい。

敬虔(けいけん)な教会信者からは、蛇蝎(だかつ)のごとく嫌われている事も、彼はよくわかっていた。

なぜなら、彼は、
母のいた娼館を買い取り、その経営を始めたからだ。
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