失われた断片・グラスとリチャード
「昼過ぎに、起きたら簡単な物でいい。
夕食は外食だから」

「わかりました。ご準備いたします」
少女は頭を下げた。

気が付くと、窓からは、
もう朝日が差し込んでいる。

現実の世界では、新しい朝を迎えて、活動を始めようとしている。

「おやすみなさいませ、旦那様」

マーブル模様のガラス玉のような瞳、透き通っているが、
ただ何かを、写しているだけだ。

仮面のように、表情筋が動かない。
華奢な体も、存在感がない。
灰色の服は、闇に溶け込んでしまうようだ。

「グラス、お前も休め」

「ありがとうございます。」
その声も、感情の色彩はない。

強いて言えば、灰色なのだろう。

不思議な奴だ・・
リチャードは、部屋に戻りながら、考えていた。
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