失われた断片・グラスとリチャード
「お前は本が読めるのか・・
では、神話の何がおもしろい?」

リチャードは目を細めて、
グラスの瞳を覗き込んだ。

その問いかけに、
グラスはうつむいてしまったが、

「答えろ!」
リチャードは、少し強い口調で
命令した。

グラスは仕方なく、下を向いたまま、
「人と同じように・・
神様であっても、いろいろな事をします・・」

リチャードは大きくうなずいた。

「そうだな。
人間と同じように恋をして、
嫉妬して、争う・・が」

リチャードは、からかうように
「お前は、神を信じるのか?」

その問いに、
グラスは、一度目を伏せたが、
顔を上げると、リチャードの目を見た。

その瞳は、揺るがない、強い意思を見せた。

「信じません。
お祈りをしても・・
苦しい事は、何も変わりません」

リチャードは、アイスブルーの目を細めた。


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